実績ゼロでも本を出してよいのか。やったこと・考えたこと・まだ言えないことを三列で分け、経験より大きな成果を約束せずに書ける範囲を確かめます。

「肩書きも数字もない僕が、本を出していいのか」と迷ったら、自分を大きく見せるより、正直に語れる範囲を確かめたいです。

やったこと、そこから考えたこと、まだ言えないことを三列に分けると、読者へ約束できる内容が見えてきます。まずは一つの経験を、この三列へ置いてみましょう。

実績ゼロでもKindle出版を考えられる理由

実績と聞いて思い浮かぶのは、売上、受賞、資格、支援人数、フォロワー数などの数字や肩書きでしょう。

確認できる実績は、もちろん信頼材料になります。

僕が本の材料として見たいのは、同じ場面の人へ渡せる経験です。肩書きの大きさだけで、書ける範囲を決めたくない。

たとえば、資格勉強が三日で途切れていた人が、学習記録を変えて一か月続けられたとします。

でも、書くのが「資格試験の合格法」なら話は別です。勉強を続けた経験だけでは、合格までの方法を裏づけられません。この人が経験をもとに書ける候補は、次の三つです。

  • 毎回どこで中断したか
  • 何を変えたか
  • どこはまだ解決していないか

「合格を保証する本」は書けなくても、「勉強が三日で途切れる人が記録方法を見直す本」なら、扱える可能性があります。

書けない理由が経験不足とは限りません。本の中で背負おうとしている約束が、経験より大きいのかもしれない。まず見直すのは、その約束の範囲です。

自分で試した範囲が一つでもあるなら、本の候補にできます。まだ理論を調べただけなら、出版を急ぐより、自分で試して記録を残すところから始めます。

読者へ渡せるのは、止まった場所の解像度

「読者より一歩先なら教えられる」という言葉は分かりやすいですが、一歩先にいるだけで同じ結果を約束できるわけではありません。

自分に合った方法が、別の生活や条件の人にも合うとは限らないからです。

渡せるのは、以前の自分より詳しく説明できる「止まった場所」です。

以下は書き分けを示すための架空例です。

毎朝5時に起きれば、勉強は続きます。

と書けば、方法を一般化しています。

私の場合は、朝5時に起きる計画を三度やめました。睡眠を削るより、帰宅後に教材だけ机へ置く方が、翌日の再開には合っていました。

と書けば、本人が確認した範囲へ戻ります。

完璧な正解ではなくても、「自分と似た場所でつまずいた人が、何を見直したのか」には価値があります。

実績が小さい時期ほど、強い言葉より範囲の正確さを優先します。どこまでの話か分かる方が、読む側も自分に使えるか判断できるからです。

語れる範囲を三列へ分ける

候補にしているテーマを一つ選び、メモを三つに分けます。

「誰でも」「必ず」と言葉を強くする前に、この三列で証明できる範囲を見ます。

区分 書くこと
やったこと 自分が実際に行動したこと
そこから考えたこと 自分の判断、違和感、学び
まだ言えないこと 未達成、未検証、他人にも当てはまると確認していないこと

説明用の架空例なら、こうなります。

区分 例
やったこと 毎日投稿をやめ、週2回の長文投稿を一か月試した
そこから考えたこと 投稿数より、相談で聞かれた一問へ答える方が自分は続けやすかった
まだ言えないこと 売上が上がるか、誰にでも同じやり方が合うか

この材料から、

SNS集客で必ず売上を上げる方法

と約束するのは無理があります。

一方、

毎日投稿に疲れた人へ、投稿数を減らしても発信を続けるために一か月試したこと

なら、経験の範囲に合っています。

最後に一文へまとめてください。

私は【やったこと】の範囲から、【同じ場面の人】へ【最初に渡せること】を書く。

「書けること」と「今回は書かないこと」を一緒に決められます。

読者へ渡してよい経験かを確認する

  • 実際に起きた場面を、固有名詞や数字を盛らずに説明できる
  • 自分の意見と、確認できる事実を分けている
  • 読者にも同じ結果が出ると保証していない
  • まだ分からないことを隠していない
  • 読者が試せる最初の一歩を一つ示している

これは出版の合否表ではありません。自分が背負える約束の大きさを見るための確認です。

三列を書いたあとに、この五項目で範囲を確かめます。

語れる範囲が小さいと感じたら、無理に広げず、記録を続ける選択もあります。途中経過を書くことと、未検証の方法を完成形として売ることは別です。

実績ゼロでも、正直な一冊は始められる

著者になる前に、大きな人を演じる必要はありません。

経験した範囲を超えて結果を約束しない。分からないことを埋めない。その境界があれば、実績ゼロの時期にも書ける一冊はあります。

テーマ候補がまだない人は、経験からテーマ候補を作る三つの問いを使ってください。

誰へ渡す経験かが曖昧なら、過去の自分の一場面から読者像を考える方法へ進めます。

今日書くのは、三列それぞれに箇条書きを一つずつ。「やったこと」「考えたこと」「まだ言えないこと」が分かれれば、背負える約束が見えてきます。

次の作業を選ぶときは、Kindle本の読者像が決まらない|過去の自分の一場面から考えるを使えます。出版の工程を確認したい場合は、Kindle出版の始め方を使ってください。