「AIに全部やってもらおう」と思っていた、あの頃の話
正直に言います。
僕が最初にAIでKindle本を書こうとしたとき、頭の中にあったのは「プロンプト一発で原稿が出てくる」というイメージでした。ぶっちゃけ、「AIがいれば3日で本が書ける」みたいな話を信じていた。
結果は、ご想像の通りです。
できあがった原稿は、確かに文字数はあった。でも読んでみると、まるで教科書のコピーみたいな文章で、「あ、これ僕じゃないな」ってすぐわかる。読者に届く前から、自分が読みたくない文章になっていたんです。
今回は、そこから何を学んで、どうやって「AIと共著」という形にたどり着いたかを、実録として書いていきます。ハウツーというより、失敗と発見の記録です。
多くの人が見落としている「書く前の9割」
競合記事を読むと、ほとんどが「ChatGPTに目次を作らせる」「本文を章ごとに依頼する」という手順から始まります。
でも、待って。そこじゃないんです。
僕がKindle出版で学んだ一番重要なことは、「本の勝負は書く前に9割決まっている」という事実でした。どんなに優秀なAIを使っても、コンセプトが曖昧なまま書き始めると、出来上がるのは「誰のためにもならない本」です。
具体的には、3つの問いに答えることから始めます。
- 自分が乗り越えてきた痛みや失敗の中で、他の人の役に立てるものは何か(テーマの棚卸し)
- この本を届けたい「たった一人」は誰か(ペルソナの具体化)
- Amazonで需要があり、競合が弱いポジションはどこか(市場リサーチ)
僕の場合、最初の失敗作は「副業の始め方」という漠然としたテーマで書いていた。読者が誰なのかも、なぜ自分が書くべきなのかも、全部ふわっとしていたんです。
AIはコンセプトの「穴」を補ってくれません。むしろ、穴をきれいに埋めたように見せてしまう。これが怖いところです。
「AIに書かせる」ではなく「AIに自分を学習させる」
コンセプトが固まったら、次にやることが競合記事にはほとんど書かれていません。
それが、「AIに自分の文体を学習させる」という工程です。
ぼくはここに一番時間をかけました。過去のブログ記事、SNSの長文投稿、昔書いたメルマガ。それを全部AIに読ませて、「この人の言葉の癖、トーン、感情の乗せ方を覚えておいて」と指示するんです。
このひと手間があるかどうかで、出てくる原稿の温度感が全然違う。
文体学習なしで出てくるAIの文章は「正しいけど冷たい」。文体学習ありで出てくる文章は「なんとなく自分っぽい」。完璧にはならないけれど、そこに「人間の体温」を加えやすくなる。
AIをライターとして使うのではなく、自分の声を増幅してくれる「共著者」として扱う。そのスイッチが入ったとき、初めて原稿が自分のものになりました。
AIが「ロボット語」を話すとき、僕がやること
どんなに上手く使っていても、AIが急に冷たいビジネス文書みたいな文章を出してくることがあります。
「〜することが重要です」「〜は必須要件となります」みたいなやつ。こういうの、読者には全然刺さらないんですよね。
そのたびにプロンプトを書き直していたんですが、あるとき一発で解決する魔法の一言を見つけました。
プロンプトの末尾に、「JLPT N1レベルの自然な日本語で書いてください」と付け加えるだけ。
これだけで、箇条書きが段落文章になり、接続詞が滑らかになり、なぜか「人間が書いた感」が出てくるんです。なぜこれが効くのかは正直わからない。でも、効く。何度試しても効く。
小さな発見ですが、毎日使う技術なので、知っているかどうかで執筆速度が変わります。
実録:完成まで、実際に何時間かかったか
では実際の数字を書きます。
コンセプト設計(STEP1〜4相当):約8時間
文体学習とAIのセットアップ:1時間
章ごとの執筆・AIとのやりとり:計14時間
推敲・加筆(「人間の体温」を入れる作業):5時間
表紙・KDP登録:3時間
合計、約31時間。
「3日で書ける」という話とは、少し違いますよね。でも、これは僕が真剣に「読者に届く本を作ろう」と向き合ったからです。AIに丸投げして数時間で終わらせることは、技術的には可能かもしれない。ただ、そうして出来た本は、おそらく誰の人生も変えない。
31時間のうち、特に「コンセプト設計の8時間」が全体の品質を決めました。ここをサボると、あとのどこかで必ず崩れます。
AIと共著してわかった、人間にしかできないこと
全部やってみて、改めて気づいたことがあります。
AIは「構造を作る」のが得意です。論理的な章立て、矛盾のない説明、網羅的な情報の整理。これはAIのほうが圧倒的に速い。
でも、「なぜ自分がこれを書くのか」という一次情報だけは、AIには作れない。
借金を抱えた夜の感触、初めて収益が出た瞬間の震え、失敗して誰にも言えなかった話。そういうリアルな体験が、文章の中に「嘘のない重さ」を生む。読者はそこに反応します。
AIはその「重さ」を表現する道具として使う。そういう関係になれたとき、初めて「共著」になります。
おわりに:60点の本でいい、出す勇気を持て
この実録を書きながら、一つ強く伝えたいことがあります。
僕は今も「完璧な本」を目指して書いていません。60点で出して、読者の反応から学んで、次の本で70点を目指す。そのサイクルを回すことが、最終的に一番力がつきます。
完璧な本を待っていたら、永遠に出せません。
AIという相棒ができた今、技術的なハードルは格段に下がっています。残っているハードルは、「60点で世に出す勇気」だけです。
あなたの経験は、誰かが今日も検索しているキーワードの答えかもしれない。それを閉じ込めたまま、完璧を待つのはもったいない。
まず一冊、AIと一緒に書いてみてください。

